二番地の内田さん?デッサン/前田ふむふむ
二番地の内田さん 前田ふむふむ
白いあごひげをはやして、美味しそうに、キリマンジェロを飲む、二番地の内田さんと呼ばれている、この老人は、若い人と話をすることが、何よりも好きだ。よく、真面目な顔を丸くして、恋愛談義をする気さくな人だ。でも、僕に対しては、どういう訳か、眼をそらそうとする。そして、必ず、遠い眼をする。とても、嫌悪に充ちた、氷が浮んでいる寂しい眼だ。僕は、みんなと同じように、気に入られたいと、必死に眼を合わそうとすると、怪訝に、顔をそらす。でも、いつとはなしに、決まって誰もいないとき、ひどく暗い部屋の隅で、心臓を患い、禁煙のはずが、秘密の場所から、こっそりピースを出してきて、
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