森の夢ー古いボート   /前田ふむふむ
 
森の夢―古いボート          前田ふむふむ

     1

青い幻視の揺らめきが、森を覆い、
緩んだ熱を、舐めるように歩み、きつい冷気を増してゆく。
うすく流れるみずをわたる動物は、息をころし、
微風をすする夜に、眼を凍らせる。
昏々と深みを低める、いのちの破片が、
夜の波に転がり、静かな夢の温みへ、
動きはじめる。

     2

みずうみは、湖面を空よりも高く
持ち上げては、ひかりの眼差しを水鏡の四方にくばり、
穏やかにわたしの躰を、透過してゆく。
そのみずの透明なやすらぎに、
涙を弛めているわたしの孤独なこころよ。
今、永遠が爽やかに繋がって
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