曖昧な情景の中で/千月 話子
る ハチミツのように
甘く濃厚に 私の体へ流れ
今も 残っているのです
そのような 心象を
あなたも 同じように持っていたのでしょうか
数時間のちに ふと
裸眼では 殆ど見えない瞳を
真っ直ぐ私に向けたのは
何故 ですか
言葉にして 言い出せないまま
あなたの気持ちを 写し取るように
私は その姿を
写真に 納めてしまいました
出来上がった 映像は
露光が 強すぎて
殆ど もやに包まれた
曖昧な ものであったはずなのに
その中に 薄っすらと眩しそうに
目を細めて笑う あなたの
顔が ありました
不確かな想いは 伝えられずに
古い 写真の中
今も 名残を留めています
低く垂れ込めた 雲間から
いくつもの光りが 照らすように
思い出は 鮮明に
そこここに 溢れて
微笑みに 満ちているのです
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