ノート(ひとつ しずく)/木立 悟
 
めないことを謝りながら
まだ夜だと気づかずにめざめ
消したあかりをふたたび灯し
失くした時間の影に脅える



あなたがあなたのままに流れる
ただそのままを聴いている
互いに目をとじ 欠伸をのぞきこむような
その奈落に響いていたはずのもの

羽と羽が燃え上がるなか
羽のない生きものの垣間見る世
風と唱と布と光
鳴り止まぬ鳴り止まぬ鳴り止まぬ鼓動



ない羽には触れるのに
いるあなたには触れ得ない
ないものの静かな唱ばかりがある
ないものの波ばかりが打ち寄せる

ひとりの食卓 ひとりの森
毎日の弔い 火を裏がえし
夢には夢の行方があり
片目の涙にふちどられている

ねむり誤り ふたたびねむり
時間と時間をつなぐしずく
言葉に沈められた言葉ばかりが
器を抱く手によみがえる



















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