豆腐/鈴木陽
い、豆腐といい、そして豆腐が、裏も表もなく存在するように見えて、忍び足で揺らぎへ分け入り、目をやれば、ため息のように白々しく、豆腐にも裏がある。そこにこっそりと目立たずにしかし丁寧にすえられている白い梯子を駆け上がり直方体の宇宙へと飛び出せば、それでもやっぱり豆腐なのだ!
ああ豆腐!
絶望的に豆腐!
おいしく清い豆腐!
ヘルシーダイエット、豆腐!
豆腐の宇宙に、どうしようもなく白い宇宙に、僕らはとうとう立ちくらみ、平たく白い豆腐に身を投げて、沈み込んでゆく豆腐の冷たさに、僕らはただひたすらに豆腐であり続け、力の限りに「豆腐!」とでも、叫ばずにはいられないのだ!
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