歌/城之崎二手次郎
 
 脳が震える大音量のロックをヘッドホンで聴きながら、通学電車のシートに座っていた。自然に足がリズムをとる。目を閉じると、自分がステージに立って歌っている光景が浮かんでくる。唇を軽く開けて息で歌う。一曲終わり、次の曲のイントロが流れる。今日は俺のライブに来てくれてありがとう。最高な一日にしよう。いくぜ。そこで目を開く。観客の視線が俺に集まっている。いや、乗客だ。声が漏れていたらしい。そのまま一曲歌った。

あとがき。
二〇〇字物語第三十七弾。
戻る   Point(0)