溝を見ている/
小禽
電車の窓を震えるように水の玉が流れていく
ピアノは旋律を増して世界を高ぶらせ
その中で私は窓を這う水玉を見つめている
世界は私に嘘をついている
本当は私は深い溝で取り囲まれ
溝の中には何もない
広大で誰もいない
奏者の指が一番高いキーを叩いた時
瞼を閉じよう
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