悲しみの流れかた/黒子 恭
環状線にぽつぽつと
浮かんでは消えていく煙草の灯かりをじっと見つめながら、
続け様に潰してみた青春は
涙では遅い、と呟く
煙草を消す仕草のような生き方をして
最後はやっぱり煙になんのかね
俺は、夜が嫌いだ
夜は温かくはない
ただ、星も何もない、吸い込まれるような色をしている夜空なら
俺の鼓動を鼓動らしく響かせてくれる気がする
どこかの国の、どこかせつない戦争映画の
エンドロールのような夜なら
かなしんでもいい気がするんだ
「でも戦争よりかなしいもんがあっちゃいけないなら、戦争は必要だよな」
どうでもいい溜め息のような台詞は、
どこにも行き場が無くて死んでいった
例えば
緩やかな流れの中で、
濁りながら沈殿し
少しずつ、少しずつ
下流の方の優しさに埋もれてしまうなら
それでもよかった
俺は青春という不純物を握り潰して出来た小石だ
流されるだけの小石だ
環状線をバイクにまたがった小石が走り去って
悲しみより早い流れに乗る
涙ではもう遅い、と呟く
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