沼の主/チアーヌ
ねえ」
女はじゃぶん、と音を立てて水の中に潜り込み、中で一回転すると、また浮かび上がってきた。
「昔風に言うと、この沼の主、ってところかしら」
「なるほど」
俺は妙に納得した。
「嫌だ。納得しないでよ。なんか、主なんて、そういう言われ方好きじゃないのよね」
「でも、実際、そうなんだろう?」
「あなたが理解しやすいように、昔風にわかりやすく言ってあげただけよ。本当は、そうねえ、沼の精ね。わたしはこの沼の水から生まれた、水の精なの」
「水の精」
そう言われれば、そんな気もした。
「ところで」
女は水面に肘をついたまま言った。
「盲亀の浮木優曇華の花、ここで会ったが百年目、ね。さ
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