沼の主/チアーヌ
 
 水面に、静かに輪が広がり、女が浮かび上がってきた。
 そしてその女は、青緑色の沼の表面に浮かび、まるで肘をつくかのような格好でこちらを見た。

 時刻は、薄ぼんやりとした昼間で、のんびりと釣り糸を垂らしていた俺は、少々驚きはしたものの、なぜか取り立てて恐怖は感じなかった。
「釣れるかしら?」
女が話しかけてきた。
「ねえ、釣れてる?」
 女の肌の色は、まるで水に透けるくらいに青白く、長く垂らした髪の毛は、一見黒に見えるのだけれど、よく見ると濃い緑色をしていた。
 女が、尋常なこの世のものではないことは、俺だってすぐに気がついたけれど、薄明るい、平和で静かな沼のほとりにいると、俺は
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