沼の主/チアーヌ
 
うに浸食して来た。

しかしそれは、とてもやわらかで、優しい感触だった。
「もっとよ、もっと奥まできて」
女は言い、俺の頭をがっしりと両手で掴み、ぐい、と真っ赤な穴の中に、俺の頭をすっぽりと納めてしまった。
「ああ」
俺はつぶやいた。
 首から上が、女の中に入り込み、俺の頭と顔は、ぴったりと生暖かいものに包まれた。

 全く身動きが取れないまま、俺の体から力が抜け、俺は次第にぼんやりとしていった。
 すると、俺の足首を誰かが掴み、ぐいぐいと、空洞の奥へ奥へと、俺を丸ごと入れてしまった。
 俺は全身を、まるで高圧のクッションのようなもので包まれたように感じた。
けれど、絶えず、ぐにゃぐにゃした感触が体中を撫で回してくる。 
 俺はすごく気持ちよかった。
 俺は、その中で、体勢を整えるように、静かに丸くなった。

 


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