深夜の連弾/狩心
 
しておいてあげようと思いました
辺りでは、人肉を引きずる音や、脱ぎさる音が聞こえます
手術の機械音も聞こえます
呪文のようで
そこからまるでまた
宇宙が広がるようで
人と人がさよならを交わしているようで
その意味を誰も語ろうとしませんでした
ポケットをまさぐると
いつの間にかコインが貯まっています
何の意味も持たない
硬い硬貨です
それを一枚ずつ落としながら歩きます
その音で暗い闇が色付くけれど
くしゃみを繰り返す細胞は
衰える事がありませんでした
年を重ねる毎に
その速度は増し
音だけがぼくを追い抜いて
闇の中に消えてい
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