距離/餅月兎
五月雨に光ったアスファルトを
さまざまな色の車が飛沫を上げて滑ってゆく
川は水嵩を増し
流れも速い
そしてぼくは時ならぬ寒さに上着を探す
雨はガラス窓をたたき続け
なにごともない
なのに
この体の中心が
ぽかぽかと
ぽかぽかとあたたかいのは何故だろう
そうか
今日は予定日なのだ
産科の場所を確認したり
出産祝いを用意したり
そんなことはしなくていい仲なのだが
今日
この雨の向こうで
ひとつの
いや無数の誕生があり
その何倍もの人が新しい出会いに
胸をいっぱいにしていることを思うと
ぽかぽかする
そしてちりちりする
だから
雨の中走って
君に会いに行きたい
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