距離/餅月兎
いつもじとじと湿っているこの街が
珍しくからっとしている
空に雲はなく
赤裸々に青を露出させている
そしてぼくは手帳の予定をなぞる
風は穏やかに通り過ぎ
なにごともない
なのに
この体の中心が
ちりちりと
ちりちりとするような感覚は何だろう
そうか
今日はお通夜なのだ
退社後急いで喪服に着替えたり
香典袋を用意したり
そんなことはしなくていい仲なのだが
今日
この爽やかな空の向こうで
ひとつの
いや無数のお別れがあり
その何倍もの人が悲しみにくれていると思うと
ちりちりする
だから
手帳を閉じて
君に会いに行きたい
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