色のない街に行きたかった/健
ったような場所で
そこには絶え間なく
ひとつのメロディが流れていた
繰り返し 繰り返し
ねじを巻いて
それでもいつかは捨てることになる
そんなオルゴールのような 音色だった
+
時折
自分以外の誰かの影が
すぐそばを横切った気がして
振り返ってしまうことがある
ここにあるのは誰かの声と
風が吹く音
そして 見おろす鳥の静かな視線
ただそれだけだというのに
+
赤 という色は
どんな景色にも似合ってしまう
+
閉じた目をまた開いて
逃げるようにして少しだけ歩く
バランスを崩したところで
やはり どうしても目を閉じてしまう
耳をふさいでも 同じメロディが聴こえる
+
どこまでも赤い空の下で
鳥たちはどこまでも落下を続けている
すべてがその羽の色に染まる中
僕は立ち止まることもできずに
今日もまた 歩き続けようとしている
むなしさと怒りを
不器用に 踵へと押し込んで
どこまでも どこまでも この青を 強く踏みしめながら
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