塔/田代深子
 

おれだけならばあの塔までも行く
がおまえが
いて

ああ見てみろ青あおく明けそめの空
がひとすじの月
に切れる

うなだれた影たちが行く
塔へ
(動くな)
影をおさえ
て低くいぶきおまえがうなる

アルミを噛む響き
そんな
部分でおれたちは共振するばかり

それは青の明かし空に切りたつ月へと電気を通し

あの塔の頂頭から根方まで
撃ち崩す

ふやけたおれのゆびにおまえの指はまぶたの
うちからひき剥がした金のレンズ
を嵌めた

それきり響きは失せ
蹲るおまえのかたわらでレンズ
を空にかざし

見ろよ
ああ見てみろ空は明けやらずひとすじ
の傷にたえ

塔はおのずと沈む
ごとくゆらいでその響きもかすか
に遠のく



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