すぎるうた/木立 悟
殺め 逃げつづけるもののうた
さまざまな色の光の輪が
川のなかへ降りつづく
戸口には何処かで聞いた声
だが誰なのか思い出せない
巨大な無言が
くちびるとくちびるのはざまに立ち
見つめあう目に互いは居ない
あなたの秘名も たましいまでも
わたしは知っていたはずなのに
器で雨と光をかき出し
波紋がすべて流れてしまうと
蒼のなかで蒼を見る目の
ほんとうの色が聞こえくる
見知らぬ祭を舟はすぎる
目をとじるたびうたは変わり
水を呑むたび別の夜が来る
羽は手首をまわりつづける
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