すぎるうた/木立 悟
灰は盲いて仄になり
灰より熱い火のなかにいる
背から腕へ溶ける羽
夜の漕ぎ手の手首に宿る
星の奥から風が来る
目のかたちの痛みに降る
十月十日後のめまいのために
寝床がふたつ用意される
川に落ちた楽器を追って
うたうたいは帰らない
舳先に置かれた器の水に
月と曇はくりかえし咲く
照準が 土に突っ伏して
何を狙っているのですか
ああ突然 百年がすぎて
そのままのかたちに腐っております
ひとごろしどの
半分土になった
将軍どの
慈悲にあふれ 心を欠いた家族のうた
何かを殺め
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