均す/生田
ことだ、と私は思う。
一人暮らしの荷をまとめる際に、テレビはいらないのか?と親父さん(私は実の父を親父さん、と呼んでいる)に言われたが、結局、私の家にはラジオもテレビもなかったりする。不便はない。そう公言すると、信じられない、と八割の人間が驚き、残り二割の人間は、確かに必要ではないね、と笑う。雑談が面白いのは主に後者である。
物と人の関係とはまことに面白いものだ。テレビが人を必要とするのか、人がテレビを必要とするのか、あるいはその両方か。この場合の物は色々と置き換えられる。例えば、宇宙でもよいし、国でも、人でもよい。なんならいま手元にある物を置いてみてもよい。
置き換えてみると、人が必要とするものはさほど多くないことに気づく。存在することと必要であるかは別であるが、ご大層に抱えているものを、まったく関係のないものと同じ次元に均して見ることも、また面白いことなのである。
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