リトマス紙の夏/望月 ゆき
 
右曲がりの坂道を
30歩のぼったところ


雨上がりには
アジサイが
酸性やアルカリ性に色づくので
それならば涙は、と
通りすがりのにわか雨を
ふたたび


つま先に 
ひとつぶの氷
ひろってそれをポケットに


透けてみえるほど近くに
夏は在って
ポケットの中で
氷は揺れている


にわか雨もやんで
アジサイは
名残りのアルカリ性


ポケットの中では
相変わらず
氷が揺れている


どうしても 氷が騒ぐので


もう 夏は
あきらめなければ、と
思った


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