オマージュ1/Lyenna
トワトワト
風と風の隙間
朝霧深い林の中で
チロンヌﾌﾟのこえが谺する
トワトワト
人里に春は訪れても
まだ山には至らない
餌のほしさか
寄る辺のなきか
チロンヌﾌﾟのこえが谺する
トワトワト
昨夜の仮寝のテント近く
いくつかの薬莢と
狐の屍骸を見つけた
テントには
獣の引っ掻いた爪痕
トワトワト
母をなくした仔狐の声か
トワトワト
ちゃらちゃら
グラスウールに触れたときの
消極的で鋭利な痛みを
おもいだす
トワトワト
数キロ先は猟区内
チロンヌﾌﾟの谺が
銃声にかき消されていく
トワトワト
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