IT Apples/渡 ひろこ
 
林檎がふるえている
暗い海の底で
ヒリヒリする電波を発しながら
傷んだ痕をさらしている


林檎たちがふるえている
共鳴しながら
いくつもの透明な触手を
スルスルのばし
痛みをそっと愛撫する



薄皮一枚 中身はグチャグチャの
聡明な果実は
それでもナイフのような悲鳴を響かせて
美しく詠うので


恐る恐るワタシも
触手をのばしたが
微妙に向きを変えられて
上手く傷口には触れられない



赤裸々に
石榴のような裂け目を語るのに
緯度のちがう触手はけむたいらしい
シーナという林檎をなげたら
少しだけ一緒に齧ってくれた




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