本当の名前/たもつ
 


そう思う一方で、待てよ、と思う
目が覚めたときにそこに現実があるという保障はない
それどころか、これが自分の夢であるという自信すらない
わたしはもしかしたら、
誰かの夢の中で生きている架空のわたしでしかないのではないだろうか
最初から何もない
布団もエッチなビデオも無い
マラソンも殴りあう競技も無い
妻もあの娘もわたしもいない
そんな世界で誰かがただ夢ばかりを見ている

いいパンチがあごに入って意識が薄れていく
もし目が覚めたら
この夢を見ているわたし、もしくは誰かが
今のわたしよりかは幸せな毎日をすごしていることを願う
遠くで誰かが名前を呼んでいる
本当の名前をわたしは知らない






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