休日出勤/松本 卓也
 
紙の資料と液晶の画面を見比べながら
音のない空間で独り言を繰り返す
大概が自身への愚痴でしかなく
誰かに聞かせる類とは言い難い

大型連休の中日とはいえ
どうせ家に居てもやる事もなく
約束など作る相手もいやしない
だけど目覚めれば夕方であるとかを
許容する事ができなかったから

一人である事を望んでいる性根
一人である事に耐えられぬ本音
どちらとも向き合いきれないまま
誤魔化しを決め込んだ金曜の夜は
酒を浴びるほどに飲んでいたっけ

窓の外ではつがいの鳩がじゃれていて
遠くの川沿いに子供らが無邪気に笑う
空き缶を灰皿代わりに一服する間に
どれだけの群像が過ぎていくだろう

眺めていたい気持を押し殺し
ふらりと椅子に腰掛ける
現実を一つでも片付けなければ
夢見る事さえ許されないのだから

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