クレヨン/石畑由紀子
 
 
英会話学校のパーティで知り合ったバーナードは
JICAの研修生として来日していた獣医のエリートで
扉という扉を開けてくれ
食事のときは女性の椅子を引く
印象的な紳士だった

街のカフェでランチの帰り
助手席から奇妙な呪文が聴こえてくるので
なぁに? と尋ねると
バーナードは胸を張って

僕はひらがなを読めるようになったんだよ


呪文 は呪文ではなく
目に走りこんでくる看板の
ひらがなだけを口ずさんでいたのだった

だけど読めるだけ 意味はわからないんだ


私たちは大声で笑いながら
街じゅうのひらがなを歌いあげていった


の ご はぜひ 
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