クレヨン/石畑由紀子
英会話学校のパーティで知り合ったバーナードは
JICAの研修生として来日していた獣医のエリートで
扉という扉を開けてくれ
食事のときは女性の椅子を引く
印象的な紳士だった
街のカフェでランチの帰り
助手席から奇妙な呪文が聴こえてくるので
なぁに? と尋ねると
バーナードは胸を張って
僕はひらがなを読めるようになったんだよ
呪文 は呪文ではなく
目に走りこんでくる看板の
ひらがなだけを口ずさんでいたのだった
だけど読めるだけ 意味はわからないんだ
私たちは大声で笑いながら
街じゅうのひらがなを歌いあげていった
の ご はぜひ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)