ひぐらし/山中 烏流
 
まに
 
大人になるという
足音
 
 
*
 
 
夕暮れに漂う
 
男の子は
砂場の照り返しを
何度も数えて
 
女の子は
鉄棒にまたがる子供の
幼いひかりを
なぞっている
 
 
深呼吸の速さで
ふたりが
瞬きを始めたとき
 
世界は一度
おわる
の、だろうか
 
 
*
 
 
琥珀いろの穴が
小さくあいた空で
 
男の子の羽は
散り散りになって
弾けてしまった
 
残された女の子は
それをただ、見ている
おりがみの羽を
そっと撫でながら
 
細く細くなる目で
ただ、見ている
 
 
*
 
 
あ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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