暗い森の童話/水島芳野
に触れた雫が地底を伝う
これは現象であり、現実でもある。
ざわめく木々の梢が
白い手足を残酷に掻き抱き
あなたはこんな暗い森に置き去り。
人魚が泡になる朝焼けのころ
あなたはいったい何になるんだろう
空が星が風が
あなたを救わず佇む夜も
私はあなたを想っていた
でもきっとあなたは
世界で独りきりだと泣いていたんでしょうね。
いとしすぎるね
そんな繊細な心で
どうして生きていけるだろう
こんな、醜い汚い世界では
君は美しすぎて儚い。
今もまだ、こんなに寂しい僕たちは
愛に飢(かつ)えて森をさ迷う。
悲しい言葉は囁かないで
幕が閉じたら「めでたし」だから。
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