むらさきの むらさきの/木立 悟
 



崖と荒地
躊躇する指
紙の上に
紙と同じ音があり
街や道の切れはしを
夜の曇に敷きつめる


苦しいですか
童話が燃えてゆくのが見えますか
でもあれは偽りです
ほんとうのほんとうの語り部は
まともなひとたちのためだけに
おかしなもの 不思議なものを
見捨てたりはしませんから


それがどれだけ苦しいものでも
あなたを消し去ろうとせぬものは
あなたをさらにあなたにする
ふたつ以上の季節の名を
発することのできぬ日々の
あなたは満ちて見えぬむらさき
ほのおほどきはばたくかんむり















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