饗宴2/
音阿弥花三郎
五月の饗宴は
フラ・アンジェリコの描いた
受胎告知
のあの場所で始まる。
すでに
マリア
もガブリエルも
いない。
しかし緑色の光線にあふれて
紫色の影が遠近法の柱を飾っている。
ハンミョウの飛ぶテラスの
ひさしが私にも影を落としている。
来客たちは花粉症か。
くしゃみばかりが聞える。
はなはだ花粉が飛んでいるのだろう。
多くの花がどこかで一斉に受粉している。
その花のもだえの
とだえ
が
五月の饗宴の終わりを
しめやかに知らせる。
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