ウエハース島の思い出 1  〜ウエハース〜/よだかいちぞう
 


恋人が居た
アルルコールという男の子と
リタという女の子

アルルコールは直接博士から聞いたことを
リタに話した
「博士が言うには沈むのは一億年先かも知れないし
今にもすぐかもしれない、けど確実に沈むって」
リタはそれを楽しそうに聞いていた
まるで、目の前を歩いていた子が躓いて転んで
笑いが吹き出そうなときのように

リタはアルルコールに云った
「楽しいことがはじまるわね
私はこの島の生活にうんざりしていたのよ
もしこの話が無かったら
私は暇を持て余して
首をくくっていたかもね
ああ、なんておもしろい話なの
島が沈むなんてすばらしいわ」

「でもリタ、沈むのは一億年先かもしれないし
島の人だって今は不安そうな顔を見せてるけど
そのうちなにも思わなくなるんじゃないかな?」

「そんなことはないわよ
私はさっき島の人たちを観察しに行ってたの
みんな終りを迎えたような顔をしていたわ
きっとみんな島がいつか沈むと
そう、いつかね
そのいつか沈むというので
もう、駄目になったのよ」
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