感情/草野春心
怒りがきみの総てをひたすとき
きみは一つなぎの皮膚だ
つま先から脳天まで体を奪われ
きみはただのペットボトルだ
わけもなく心が震え
泣くことさえできないことがある
悲しみは抽象的な感情だ
それだけに悲しみは詩になり
嘔吐にもなる
忙しく未来を口にしなければ
怒りと悲しみの果てのあきらめを
安らぎと交換しなければ
よろこびはやって来ないだろうか
夕暮れの染料を
涙のようにぽたぽたいわせて
(でもそれは涙ではない)
きみは真綿にしみ込ませ
背中からぎゅうぎゅう詰め込んだ
それだけは言葉に出来ない
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