徐行運転を続ける旧型のブルーバードの不安を煽るような排気ガスの青色みたいなものだ/ホロウ・シカエルボク
 

小柄な男が運転する原動機付自転車に無理な追越しを掛けた若い女の運転するデミオが
追越しきれずに曲がり角で接触事故を起こした
投げ出された男は二度ほど激しくへこんだ右肩を震わせたが
それきりぴくりとも動くことはなかった
若い女はパープルのデミオから降りてきて
男の様子を見て蒼白になった
命を落とすほどの勢いには見えなかったが
打ち所というやつは見ているものからは想像もつかない部分があるから
彼女はせめて早く電話をかけるべきなのだが

俺の仕事は便宜的なもので
ただそこに居ればそれでいいという一日もある
自分用の机に腰を下ろして「眼を開く」なんか読んでいると
通りすがりに
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