君を思い出している/吉田ぐんじょう
 


眼を閉じるとそこは
金木犀の香る秋のベンチで
横には
もう何度も思い出しているから
びりびりの紙のようになってしまった
いつかの君が
黙って座って煙草をすっている
周囲がいやにうるさいので
ここは大学だと気づく

うどんのにおいがする
学食で君はいつもうどんを食べてた
君のめがねは
うどんの湯気で曇っていて
まるで本心が見えなかった

眼を開くと
汚い部屋の中で
わたしは仰向けに寝そべっている
それがあんまり毎晩続くから
何かの病気かも知れないと思っている



町の人がみんな君に見えるので
なんだか怖くて
外出できないようになった
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