井戸の神様/寅午
たちと井戸と小屋の間をバケツリレーをして、火は大事になる前に消すことができた。牛小屋は半分燃えてしまったが、母屋は壁を少し焦がしただけで済んだ。すべては井戸水のおかげさ。
でも、なぜおばあちゃんは井戸に水があることがわかったんだろ? 後で、おばあちゃんに聞くと、
「あたしゃ、毎日井戸の神様にお祈りをしとるけん。火事の前の日に水が湧いとるのを見とったと。
おばあちゃんは笑いながら答えた。
火事のあと、毎日おばあちゃんは井戸にお神酒をあげるようになった。真夜中になると、井戸のほうから聞こえるんだ。酔っ払った神様が、ほろ酔い気分で歌を歌ってる声がね。今日は夜遅くまで聞こえる。きっと、
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