黒い影/長月 猫
 
総ての物に内包されたソレは

等しく対等な季節の流れに身を委ね

いずれ訪れるであろう崩壊の刻を待つ

ある者はソレを畏れ

ある者はソレを歓喜し

ある者はソレを退けようと無駄な足掻きをする

だがソレの持つ辞書に『撤退』の文字はない

ソレの持つ辞書に『止まれ』の文字はない

ソレの持つ辞書には『前進』の文字しかない

我々はその鎖に繋がれたひ弱な罪人でしかなかった
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