nostalgic/春日
 
いることをおれは知ってる

例えば昨日はきみを失って
けれども今日も失って
明日はまた失って
いつかおれはゼロの存在になるのか


ほんとは知っていたんだろ、
セックスを知らない女子たちが口にするセックスという言葉がやけにリアルにひびく理由も、
経度十五度毎に一時間の時間の流れを繰り返す地球の理由も、
忘れたくないことばかりを連ねて書いたメモ用紙をいつも失くしてしまう理由も、
アドレス帳にか行の名前ばかりが増えてゆく理由も、
砂時計は自分で終わりはするけれど始まりはしない理由も、
始まりには終わりがつきものである理由も。

秒針を何度逆向きに回しても
どうせ同じことを繰り返すんだ、
そもそもそんなことをしても
時間は元には戻らないのだし、
それでも戻れたらよかったんだろうね
きみは祈っていたんだろうね





いまだ海になりきれないきみはたった数メートルの世界に手をのばし、いまにもわらってくれそうな睫のカーブでおれを見つめる。
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