曇天、硫黄/因子
 
ほんとうの絶望に出遭うまで
あと何時間何分何秒
この曇天は
とりどりのあかりで
硫黄のけむりのいろをしているから
おさない夢のおわりにみた、あのあかい
みたことのない動脈血よりもっとあかい空が
ほんとうになってしまう前に
「逃げ場など何処にもないこと」
に気づかないように
石畳をみつめて
足を出す
踏みしめる
いち、に、さん、し、
左、右、左、右、左、右、右、右、右、


電線も廃棄物も現実感も地下に埋(うず)めた
外国のようなこの街に
もうななねんも触れて
暗闇に瞳孔がひらくように
すっかり慣れてしまった眼は
当たり前にある現実の狭間の重たい翳りを
簡単にみつけだすことができる



誤魔化しのきく場所などはもうきっと
ここに幾つも残っていないから




あと何時間何分何秒か、

(わたしは顔をあげられない)

しめった石畳を数えながら
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