ひとつ ひらく/木立 悟
水銀の光の一粒が
横へ横へと動いている
ゆうるりと回転し
他の光をかき分けている
てのひらを巡る
遠いみちのり
つもるうつろ
熱の轍
まるめられた透明が
風のなかをころがりゆく
あたたかくやわらかな
盲目の歯車
水や声のすぎたあと
熱をうずめる熱の指笛
くさくちびるはなひかりみみ
触れるたびに変わりつづけて
水紋がひとつ
川辺の炎を映している
いつか誰かに言われたかった言葉が
誰にも言われぬまま芽吹いている
重なりを解き 重なりを解き
しずくは洞に響いている
羽化の標のしめす先
散るものすべてをふ
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