夜が燻る/杠いうれ
 
夜が燻る
夜が放火する



わるいゆめ
ほんのすこし掠めた
ささくれが毛布にひっかかるような
ひっかかるようなきがして
指を舐める

夜が燻る
夜が放火する


にがい指
きのうしか知らない
わたしが上手に眠れるまで
ねんまくでつながれる哀れみのよう
きのうまでしか知れない体
指を舐める

夜が燻る
夜が放火する


やわらかいものがほしいけれど
ここにわたしの体ぐらいしか、無い



夜が燻らせる
夜に、

  放火されたシトラスが 紫煙を蹴散らして




サイレンが鳴りはじめる
いくつかのカーテンのむこう




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