砂になった好きな人/吉田ぐんじょう
 

わたしの好きなひとの眼の中には
いつでも空がひろがっている
外が雨でも嵐でも
すこんと晴れた青空の眼だ
することが何もない
曇った日曜日なんかには
一日中好きな人の眼を見ている
そうしてそのままねむってしまう
そんな日は必ず夢を見る
鳥になった夢を見る
海だか空だか分からない
ただ一面に青い場所を
どこまでも一人で飛んでゆく
そんな寂しい夢をみる


好きな人はお風呂に入ると
少し膨張した身体で出てくる
身体が水を吸ってしまう体質なのだろう
足首とこめかみを握ってぎゅっとしぼった
そのとき力を入れすぎたようだ
以後 三日経っても一週間経っても

[次のページ]
戻る   Point(21)