無題/10010
 
■或る猫のイメージに悩まされている。
黒猫で、きちんと正座していて、そして首は切り落とされている。水平な切断面からは花が溢れんばかりに咲いていて、花束のようである。脊髄から花弁にいたるまでピンと張ったラインが美しい。花園は風に吹かれて、銘々の花は互いに乱雑な方向にたなびくが、まさにその方向はまったくランダムであるが故に、総体としてはあらゆる動きは相殺され、統計的にいえば、花園は全く微動だにしない。花園は完全な渾沌であるゆえに完全である。そのようなアセファルを抱えたそれをわたしはなお猫と呼びたい。それは猫ではないからだ。そも、いったい何を以て顔と認めればよいのか? 目が合えば顔なのか。しかしわた
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