松井冬子 賛歌 /いねむり猫
 

鋭く口を開けた 激しい暴力の傷

穏やかな 美しい死が覗いている 傷口

きれいな肌 シミ一つゆるさない 美しさと健康
暴力と死を恐れる心が隔てていた 広大な世界

あんしんと安全と こころよさ 穏やかな共感
それらが身にまとい付いて もう一つの皮膚のようになってしまった生

それらが私達から隔てていた すぐそこにあるのに 遠く目を塞いでいたもの
すでにそれらを感じ取る触覚を 根源的な感覚を失って久しい

それは 巨大な樹木が空を覆う はるか頭上の緑の天蓋を感じ取る 頭髪の拡散

あるいは 闇の中にさらに奥深い巨大な闇を感じる 内臓の震え

小さな草の花に 自
[次のページ]
戻る   Point(1)