「 今日から強化人間弱化月間。 」/PULL.
警官はこう言って、首を傾げた、
「どの駅でも不審な点はどこにもなかったんですがね、ただひとつだけ気になったことがありまして、どの駅にもね、蔦が生えてたんですよ。ええ、あなたの名前と同じ蔦が、事故のあった駅の階段の近くにはどれも…まあたぶん偶然なんでしょうけどね。でも何だか気になって…。」
八。
わたしが殺したウシキドくんの葬儀は今朝、営まれた。葬儀にはウシキドくんのご両親と親族、それにわたしを含む会社の親しい同僚数名が参列した。あのタワミくんもそのひとりだった。黒い喪服を着たタワミくんは会社でのタワミくんと寸分変わらず、いつもにまして「いつも」と同じ顔をして、「おはようございます。」を言うようにお悔やみを言い、焼香をした。
途中ウシキドくんの親族の子供が便所に行くのを我慢しそこね、おねしょをしたので、そばにあった新聞で拭くこととなった、おねしょで濡れた新聞の一面にはこう書かれていた、
『強化人間弱化法案、さらに一ヶ月延長。暫定強化も認めず。』
了。
戻る 編 削 Point(2)