夜。笑い。にて。/なかがわひろか
 
また床を汚さないように注意をしてから拭かなければならない。そこにはコミュニケーションが必要となる。ここにいる人間は誰一人そんなコミュニケーションを知らない。だから結局誰も布巾を取りに行かない。床に広がった牛乳は男の足の裏を輸送機代わりに全く汚れていなかったところまでにも広がる。真っ白い汚れ。そう思った途端また爆発的な笑いが込み上げてくる。真っ白い汚れ。爆発。ガラスが割れて肉体も千々になることを想像したらば再び笑いが爆発する。男は爆発した笑いをBGM代わりに気持ちの悪い華麗なダンスを床で繰り広げる。気持ちの悪い華麗なダンス。また誰かがそう言って笑いが爆発する。焦土と化したこの部屋で笑い声が渇く。二十五時。
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