コトリ/伊那 果
コトリとした
小さな違和感を
いつもいつも大切にして
彼女は生きてきました
胸の中で
コトリと鳴るたび
どうしてだろう
と問いかけてきました
どうしてだろう
問いかける彼女に
答えてくれる人は
ほとんどいなくて
どうしてもだよ
どうでもいいよ
そんな言葉が
返ってきました
だから彼女は
どうしてだろうと
心の中で
つぶやくようになりました
私は
この世界には
なじめない
生きものなんだ
そんな彼女は
大人になっても
コトリという音を
時々聞きます
心の中
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