水の庭/及川三貴
風の強い朝に吹き散らされた雲の放恣な広がり
僕たちの寝乱れたシーツのようだねという君を
横目に見ながら私は昨日身体の中で一度だけ
咲いた水の踊りを思い出そうと必死だった
テーブルの上に置かれた花はこの世界の十方にも
いつか咲くと囁かれて私は秘密を打ち明けられたかのように
身を震わせて 君の耳を優しく噛みたいと
私たちが作ったたくさんの形 どれも還らずに
吹き付ける息の中に寂しく廻る羽根
袖が擦れる乾いた海砂を掬い取って零す
一粒にいずれの君も居ないというあきらめが
曇天の昼過ぎから再び雨を呼んで
同じ音を聞く 雨は砂が落ちる音
私の嘘を暴く 君が朽ちる音
髪が凪いでひとときの静けさ
風の強いおしまいに 発した言葉
水面に落ちて 身体の中で一度だけ
咲いた
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