室戸岬/たのうち
 
黒潮の呻き声の中に
僅かな光を探し求めて
何時間も何時間も
その有機的な水を
掬ってはこぼし掬ってはこぼす
両手が潮負けして赤くなるまで

強く照りつける太陽に
涙が頬に張り付いて塩になるのではと
ぼんやりした頭で考えながらも
泣き止むことも拭うこともできなくて
口角から流れ込んだ液体は
潮水ほどしょっぱくはなかった

あの意志的な流れの下で
鱗を纏った小さな体は物言わず
じんじんと火照ったうす赤い肌を
遠慮なく冷ややかな視線で貫いていく
抵抗することを覚えた時にはもう手遅れで

風通りのよくなったその体は
時間も追いつかない程深く深く
闇黒の世界に真っ逆様に堕ちて
光を求めていた過去さえも忘れ
この世界こそ我が居場所と認めた
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