さくら/shu
 
「ここになにかがありまする」
そう言って彼女は化石発掘用のトンカチで
私の胸をとんとんと叩く
いつもの陽だまりの午後
「なにもありませぬ」
「いやいや、なにかあるであろう」


やがてポッカリと割れた私の胸の断崖を
丁寧に刷毛で掃いて
「ふむふむ」
と覗き込む

「あった?」
彼女は答えない
まるで考古学者のように眉をひそめて
くんくんと匂いを嗅ぐ

一陣の風が胸の穴から舞い上がり
彼女の前髪をふわりと揺らす
驚いた表情でなにかを指でつまんで
私の前に差し出す
「これはなんであろう」
「はて、桜の花びらではあるまいか」
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