精神科の待合室でのつまらない妄想。(千葉県民の会で朗読したやつ)/よだかいちぞう
うことって聞くと
わたしも秒針で秒針もわたしなの
おなじからだになったの
そういっていた
それからというもの
彼女は暇があると小声でチッチッチッチッと言うようになった
チッチッチッチッ
彼女は待合室で秒針と一緒になったと云っていた
けど、それはありえないことだった
精神科の待合室には秒針のある時計は置かないことになっているからだ
もともと待合室に置かれている掛け時計には
短針と長針だけで秒針なんか無かったのだ
だけど彼女は掛け時計を指差して云う
いま私はここにいるけど、もともとはあそこに居たの
ぼくは彼女と同化することができた
ぼくは彼女の体の中に入り込んだのだ
ぼくの存在は0秒から59秒を数えて
長針と短針を動かすことじゃなくなった
ぼくの存在はぼくの存在はぼくの存在は
チッチッチッチッと声を出して云うこと
ぼくは彼女のチッチッチッチッという声が好きだ
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