此方の景色/因子
 

今私の頭の上には呆けたような空がある。
長い長い長い年月の間に己がなにものであったかをすっかり置いてきてしまったような様である。

誰もいない公園のベンチに横になる。少し躯をぎゅうと伸ばしてみる。臀部の上辺りに力を入れると背骨の真ん中くらいのところでばきんと音がした。そのばきんの後に続く静寂。
静寂はいつも脳を忙しくさせる。私はまず誰もいない公園のベンチに横になっているという自分をゆっくりと時間をかけて認識した。さて。
怖ろしい学校からもつまらない親からも忌ま忌ましいくらいに馴染んだ土地からも逃げ出してたどり着くところなどないのだった。自分はどこまでいっても自分でしかなくて逃れる術な
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